2016年11月12日付

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世界的な自動車産業のまちとして有名な米デトロイト市が2013年に財政破綻し、1兆円を超える負債の返済に向けた資産の洗い出しで、すぐに現金化できると特に注目を集めたのがデトロイト美術館(DIA)の収蔵品だった▼市民に愛されたDIAは国内外からの支援もあり、ゴッホやセザンヌなど世界屈指のコレクションを1点も失うことなく存続の危機を乗り越える。茅野市在住の作家原田マハさんの「デトロイト美術館の奇跡」(新潮社)はこの実話を基に書かれたフィクションだ▼貧しいながらも、DIAで過ごすつかの間に幸福を感じる夫婦が描かれている。美術品を「友だち」と呼び、友に会うために美術館へ出かける2人。DIAに寄せる市民のこうした思いが奇跡を起こす。アートには疎い身だが、思わず美術館に足を運びたくなった▼身近にも歴史のある美術館はある。諏訪市美術館は県内初の公立美術館として1956(昭和31)年に開館し、60周年を迎えた。国登録有形文化財となっている木造の建物は、旧片倉製糸が43年に建てた。しっくい塗りの趣きのある建物内に、美術品が並んでいる▼4月からさまざまな記念事業を行っており、きょうから記念展の後期展示が始まった。開館当初は収蔵品がほとんどなく、地元作家が作品集めに奔走したという逸話も。地域の文化・芸術振興のため汗を流した人たちの苦労がしのばれる。

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