2016年12月04日付

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橋脚だけだったときには田園地帯にコンクリートむき出しの高層ビルが一列に並んでいるような風景だったが、橋桁が造られてくると、空間に橋の姿が見えてくるようになった。大きい▼国道153号伊南バイパスの最後の工区では、駒ケ根市・飯島町境の中田切川がつくる深い谷に、全長990メートルの長大橋を架ける。橋脚の間隔や橋桁との角度、直線の組み合わせには安定感があり、構造物としての美しさがあるように思う▼配慮のない巨大構造物が風景をぶち壊すことはよくあるが、人工構造物が年月とともに景観に溶け込むこともある。観光名所にあるアーチ橋などはいい例だろう。渓谷に架かる大きな鉄のアーチが、なぜか周囲の紅葉や川の流れととともに絵になる風景を作り上げることがある▼三遠南信自動車道の飯喬道路で建設中の天龍峡大橋の工事現場が報道機関に公開された。伝えられる映像からは、桁を架け渡す前の足場設備が出来上がり、渓谷の両岸がつながっているのが分かる。名勝天龍峡にどんな橋が出現するのか、興味が湧くところだ▼国土交通省天竜川上流河川事務所が数年前に取り組んだ人と暮らしの伊那谷遺産プロジェクトでは、「美しくも厳しい自然風土の中で、土木のものづくりを工夫して生活を営んできた先人の足跡」が数多く拾い出された。谷を渡す長大橋を将来、そんな視点で見詰める人たちがいるのかもしれない。

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