2023年6月15日付
諏訪湖の南岸に流れ込む上川は、諏訪湖最大の流入河川で広大な八ケ岳西麓に降った雨を集めて流れ下る。その下流域、諏訪市四賀の河川敷にある上川マレットゴルフ場は、大雨で上川が増水するたびにコースが水浸しになる「宿命」を背負っている▼数年前には年に3回もコースが壊された。地元利用者でつくる上川マレットゴルフ場愛護会はその都度、根こそぎ流されてきた草や枯れたヨシ、流木、土砂やごみを片付け、コースを元通りにする。行政に頼るのは燃料費など最小限。ここでは「自分たちの施設は自分たちの手で守る」が合言葉だ▼先ごろの大雨被害を受けて13日に行われた今年最初の復旧作業を取材した。約60人の参加者の多くは70~80代。役員の説明に間髪入れず「おい、どうやるだ」「流木はチェーンソーで切るよ」「ごみの分別はどうする」などと明るい声が響き、作業を盛り上げた▼集団の中で自分の役割を見いだし、一つや二つ文句は言っても目的のために結束する。肉体労働もいとわない姿は、戦後の混乱期を生きた世代がなせる業か、それとも7年目に一度、奥山の大木を神社の四隅に曳(ひ)き建てる御柱祭を1200年以上続ける諏訪人の心意気か▼かつて1200人いた会員は300人に減り、自然災害という宿命を乗り越える力も衰えてきたという。時代が変わっても仲間と汗を流し、地域を守り続ける心は大切にしたい。