2023年6月18日付
今年の日本酒の新酒鑑評会で諏訪地方の3銘柄、上伊那地方の5銘柄が金賞を受賞した。長野県全体の金賞の数の多さは全国3位。蔵人の努力が実を結んだ形だ▼金賞銘柄数のトップは山形県だった。同県では酒蔵の枠を超えて杜氏らが酒造りのノウハウを教え合うことが進んでいるという。同業他社の人たちが味を磨くために連携する。米や水といった素材に知恵をプラス。地道な取り組みが結果に結び付いたのであれば意義深い▼酒造りの知識や技術を共有するだけではない。多くの人がアイデアを出して酒蔵同士の底上げを図ったり、経験を若手に伝承する場にしたりする。ブランドイメージが高まり、販売拡大につながる。こうした好循環を生む可能性が高まる▼「教え合い」という言葉を聞くと、3月に日本が優勝した野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を思い出す。キャンプ初日から参加したダルビッシュ選手は、後輩の投手に技術面の指導をするなどしてチームに貢献。栗山監督から「ダルビッシュジャパンと言ってもいい」と評された▼物流をはじめさまざまな業種で、垣根を超えて助け合う場面が増えているという。まさに企業間のギブアンドテイク。最初は手探りでも、軌道に乗れば人手不足を補うことができる。健全な競争関係は維持しつつ、どうサポートし合うのか。業務を持続可能にする鍵の一つとも言える。