2023年6月19日付
本社近くの高島公園を久しぶりに訪ねると、園内の一角がギャーギャーと騒がしい。声は十数メートルの樹上から降ってくる。ゴイサギが群れで子育て中だ。カラスが親の隙を突き、ひなを狙って巣に近づく。激しい鳴き声は攻防の叫びだった▼地面にはひなの死骸が横たわり、足が折れてうずくまった成鳥の姿も。落ちて無残に壊れた巣を見れば、太さ、長さがそろった小枝が何千本か。親鳥が1本ずつ選んで運び、組んだ姿が想像される。悪天候や天敵の危険の中で命をつなぐ自然界の厳しさを実感した▼茅野市内の会社では正面玄関の真上でツバメが営巣していた。入り口の中央足元にふんの受け箱が置いてあるから、社員もお客さんも脇に回り込んで出入りする。ツバメ親子に会社の顔を譲って、怖がらせないように歩く様子が温かい│と地域の人の笑みを誘った▼社長の小池清紀さんは「親鳥が懸命に餌を運ぶ姿にジンとくる」と胸に手を当てる。小さな鳥に尊敬の心を寄せ、子育て中の親鳥特有の敏感さと苦労をおもんぱかってドア越しにそっと育ちを見守っている。干渉はしないが安全に気を配る-その距離感がまたいい▼人間界では政府が「異次元の少子化対策」を決めた。物価高の今、子育て世帯の助けになるだろう。が、出産前世代や出産、育児を支える側にも寄り添えているか。課題は裾野が広く根深い。多次元のこまやかな目配りが要る。