2023年6月22日付
「ぺいぺい」。キャッシュレス決済サービスでなじみの響きだが、岩波書店の国語辞書「広辞苑」には、地位の低い者、技能の劣っている者をあざけっていう語―とある。こんな言葉を集めた「広辞苑かるた」が人気という▼「ぺいぺい」のほか、「ろっく(六垢)」「すえづよ(末強)」など一般になじみの少ない50の言葉を選んでいるという。難しい、分からない言葉の意味を想像しながら札を探るのが魅力なのだろう。知らなかった日本語の奥深さにも触れることができるかもしれない▼収蔵25万語。豊富な語彙が特徴の国語辞書の代表格。1955年の出版以来、改訂を重ねてきた。一流国になるには日本語の総合辞典が不可欠―。出版を巡っては、言語研究に10年の歳月をかけ、さらに印刷直前に空襲に遭うなど、戦争に翻弄された新村出、猛の親子ら編集陣の信念や苦労が伝えられる▼言葉集めに時と力を尽くす一方で、日本語の豊かさに誇りを持とうと、新しい言葉や意味を積極的に採り入れ続ける努力も惜しまなかったとされる。2017年改訂の第7版でも「がっつり」や「ちゃらい」「上から目線」「可視化」など、多くの”新語”が追加されて話題になった▼かるた遊びを楽しみながら、辞書の出版を巡る逸話や日本語の移ろい、取り上げられているような難解な言葉に触れてみるのも面白そう。梅雨の休日のお供に取り寄せてみようか。