蚕品種「太平長安」を飼育 駒ケ根の竹内さん

首都圏から見学に訪れた着物愛好者らに養蚕について説明する竹内慶子さん(左)=自宅敷地内の蚕室
駒ケ根市上赤須の養蚕農家、竹内慶子さん(48)は、国産の希少な蚕品種「太平長安」の飼育を6月から始めている。着物販売仲介会社の日本和装ホールディングス(東京都)が、約1年間にわたって蚕の飼育から着物の仕立てまでを行う養蚕支援プロジェクトの一環。22日には、同社が展開する「着付け教室」を卒業した着物愛好者の3人が、養蚕現場を見学した。参加者は蚕の生態や飼育方法を学び、日本の伝統文化に理解を深めた。
竹内さんは、2020年まで同市東伊那の駒ケ根シルクミュージアムで学芸員として勤務。その後、市内最後の養蚕農家が廃業したのを機に引き継ぐことを決断し、21年から養蚕に取り組んでいる。
同プロジェクトは伝統技術や文化の継承、養蚕業の支援を目的に初めて企画。竹内さんは、日本和装の取引先である宮坂製糸所(岡谷市)から紹介を受けて参加した。
昭和期に高い普及率を示した蚕品種「太平長安」は生糸に上品な光沢感があり、製織(せいしょく)するとしなやかで美しい生地に仕上がるのが特長という。現在は希少品種で、蚕糸科学技術研究所(茨城県)に卵が保存されているのみ。今回のプロジェクトでは、冷凍されていた約4万頭の卵を5月にふ化させた。
この日は首都圏から3人の女性が養蚕見学に訪れた。東京都の遠地安子さん(73)は、飼育現場の細かな温度管理に感心した様子。「蚕はとてもデリケートな生き物だと分かり、貴重な経験になった」とし、「着物の完成が楽しみ」と期待した。
竹内さんは「最後まで丁寧に蚕を育て、きれいな繭を作りたい。今後も地元の養蚕の歴史や文化を語り部として伝えていけたら」と話した。
繭は今月中に出荷。7月上旬に宮坂製糸所で生糸を製造し、8月に京都府で白生地を製織して反物に織り上げる。来年2月ごろ着物に仕立て、日本和装に加盟する問屋などで販売予定という。