2023年6月28日付
神前に向かって背筋を伸ばし、胸の高さで両手を合わせる。右手をわずかに引いて手のひらを斜めに重ね、打ち鳴らす。全国諏訪神社の総本社・諏訪大社が鎮座し、神事や祭りが身近にある諏訪地域でも、諏訪市上諏訪地区の若者たちが法被姿で参拝する姿はりりしく、粋に見える▼彼らは同地区にある手長神社と八剱神社、先宮神社の氏子有志でつくる上諏訪氏子青年会(氏青)の会員たち。青年と言っても、筆者と同じ50歳前後の「おじさん」が多い。7年目に一度の御柱祭の伝統と技術を守り伝え、奉賛会の協力団体として御柱曳行(えいこう)の中核を担う。各神社の清掃やしめ縄作り、霧ケ峰の雑木処理や献血などの奉仕活動にも取り組む▼氏青の20周年記念式典が開かれたという記事がきのうの本紙に載った。20年前、氏青は御柱祭に情熱を燃やす血気盛んな若者の集まりで、酒を酌み交しては談論風発、本気でぶつかり合っていた。祭りが終われば涙を流し、喜びを分かち合った▼4回の御柱祭を経て、氏青は奉仕団体の色彩を強め、人口減少が進む地域を支える存在になった。横山真さん、藤森邦武さん、河西修平さん、飯坂正樹さんという歴代会長に加え、3神社の古老や宮司が果たした役割は大きい▼伝統や文化を学び、地域の人々との出会いを通じて、若者が立ち居振る舞いを磨く。かけがえのない地域性や気質を育む好事例と言えるだろう。