2023年7月2日付

LINEで送る
Pocket

年のせいとはよく言うが、この頃記憶力がいよいよ怪しい。人や物の名前が出てこないのは常のことで家族の会話は「あれ」「これ」「それ」と指示詞のオンパレード。でも何となく通じるのが幸い。熟達と言っては居直りが過ぎるか▼「記憶に不安を覚える世代に本気で考えてほしい」と法律や福祉のプロは成年後見制度の利用を強く呼び掛けている。家族のほか専門家が、認知症や心身障がいなどで自己判断が難しい人の後ろ盾となり、金銭管理やさまざまな契約、手続きの手助けをしてくれる▼行政書士の木村和彦さん(茅野市)は「重い病気で意思表示ができなくなると日常のお金さえ動かせないこともある」と言う。独居高齢者が増えるにつれて入院の手続きにも難儀するトラブルが多くなっているそうだ。遺言、遺産は死後の話ではない│と強調する▼社会の動きの速さに付いてゆけない戸惑いに犯罪も容赦なく付け入る。「長い経験で人の善悪ぐらい分かる」と思いきや、巧妙さを見抜けず被害が後を絶たない。迷った時に気兼ねなく相談できる存在は誰にでも必要だ。「聞くはいっときの恥」と知るのも年の功▼この頃、買い物時に「同じ品の複数注文に間違いはないですか」と丁寧に確認してくれる店がある。やはり自助努力だけでは心細い。忘れっぽさも理解不足の勘違いも織り込んで包容してくれる受け皿が地域に広がればうれしい。

おすすめ情報

PAGE TOP