2023年7月8日付

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美しい夜景スポットを発信して地域活性化につなげようと、20年近く前に誕生したのが日本の夜景100選だ。県内認定地は3カ所。善光寺平を望む姨捨SA、松本市城山公園、そして諏訪市立石公園である▼立石公園のテラスに立つ。いまは午後7時半以降が美しい時間帯か。次第に街の明かりが増え、まばゆい光の帯が諏訪湖を包む。3年前の夜景はどうだっただろうかと想像する。自粛生活で市街地や温泉街の光量はいまより少なく、逆にステイホームで一般家庭の明かりは多かったのではないか、と▼諏訪市大手の並木通りを彩る高さ約3・2メートルの大提灯。60年以上の歴史があり夏の風物詩として定着する。だが、制作を担ってきた保存会が高齢化などを理由に昨年度解散。集まりにくくなったコロナ禍も追い打ちを掛けた。灯は消えかけた▼この街に生まれ、幼少期から大提灯を見上げてきた藤森優さん(48)が輪を広げて制作を受け継いだ。今年は作業を手伝う子どもたちの姿も。若者の熱意に応え、元保存会員が技術指導で協力。4基をこしらえて掲揚し、伝統をつないだ▼高度成長期には20基以上が通りを彩った。数は遠く及ばないが、多世代の思いや願いが詰まった特別な大提灯だ。「市民祭りの諏訪よいてこも帰ってくる。沈みがちだった街が明るくなれば」。3年前、人も明かりも消えた街中。大提灯には再興への強い決意も込められる。

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