2023年7月13日付
梅雨末期の集中豪雨による災害は今年も発生し、九州では尊い命が奪われた。「何十年に1度」は毎年発生すると認識を改めざるを得ない▼出水期を前に行われる防災訓練では、土のうを作成し、積み方を学び、情報伝達や避難誘導、避難所設営の方法を確認する。防災講演会に参加する地域住民の表情は意識の高さの表れだ▼その姿を見るたびに3月に茅野市で開かれた大地震を想定した防災講演会を思い出す。避難所での「トイレパニック」が話題だった。電気や水道などライフラインが寸断された被災地の避難所では、身内の安否や食料、飲料の確保は最優先だが、同じくらい優先されるべきなのがトイレ利用のルールの徹底だ。断水したトイレに利用者が集まればたちまち使えなくなる。開設直後に対応しなければ手遅れになる。水分摂取の制限は避難者の体調悪化を招く▼講師を務めた下諏訪町の防災士、高橋敦子さんと小松直人さんが厳しい現実を突きつけた。質疑応答で参加者の一人が発した問いが胸に刺さった。「なぜ、こんな深刻な問題があまり知られていないのか」▼報道も被災現場の惨状や奇跡の救出劇ばかりに目が向いてしまいがち。その裏で十分に伝えられてこなかった真実。高橋さんは平時から「災害時への備えとともに覚悟を持つように」と呼び掛ける。「何十年に1度」では済まなくなった時代を生きるために必要な意識だ。