南アジオライナー 利用急増で運行拡充へ

利用者が増える南アルプスジオライナーの今季運行をPRする伊那市職員
15日から10年目の運行が始まるJR茅野駅(茅野市)と南アルプス林道バス起点の仙流荘(伊那市長谷)を結ぶバス「南アジオライナー」の利用が上向いている。伊那市のまとめによると、昨年の利用者は過去最多の1565人と急増し、コロナ禍前の約3倍に。首都圏から南アを目指す移動手段としての認知やコロナ禍による登山人気の高まりなどが要因とされる。これを受けて市は今季の運行を拡充し、高まる需要に対応する。
ジオライナーは、主に夏山シーズンに合わせて、JR中央東線の特急「あずさ」を利用する登山客の乗車を狙って、伊那市とジェイアールバス関東(東京都)が共同で運行。茅野駅と仙流荘を直通でつなぐ。仙流荘は、仙丈ケ岳や駒ケ岳など南ア北部の登山口・北沢峠と麓を結ぶ市営南ア林道バスの起点だ。
運行が始まった2014年の利用者は520人、コロナ禍直前の19年は539人で、その間は300~600人台の利用が続いた。コロナ禍で20年は全面運休し、21年は運行を縮小したが522人に回復。3年ぶりに通常運行した22年はコロナ前の3倍に急増した。
市は増加の要因に、南アを目指す交通機関としての認知向上や登山人気の高まりを挙げ、19年の台風19号豪雨で大規模な土砂災害が発生し不通となっている山梨県側の北沢峠-広河原の林道の影響を指摘。南ア北部に向かう登山者の伊那市側からの入山が増えているという。
市観光課の唐木玲係長は「便利な交通機関として定着してきた。利用者が1200人を超えると市の公費負担が限りなく減ってくる」と手ごたえを口にする。
7月15日~10月9日に運行する今季は、需要の高まりを受けて、昨年まで土日祝日のみだった運行に金曜と月曜を加えて週4日の運行日を確保する。さらに7月21日から始まる「毎日運行」の期間は、例年は盆までだったが、今季は8月31日まで延ばす。
一方、昨年からはタクシー会社と連携して高遠駅(同市高遠町)と仙流荘などを結ぶ「ジオタクシー」も運行。昨年の利用は240人(1便当たり1.97人)と好調といい、今年も6月から運行を始めた。
さらに、今年は同市の中心市街地と仙流荘を早朝につなぐ新たなバス「モーニングジオライナー」の運行も15日にスタート。市は登山者の市街地への誘導や、山の縦走に便利な公共交通網を整備し、南ア北部の登山基地となる街づくりを推し進めていく考えだ。