2023年7月16日付
「江戸時代の人は縄文と現代のどちらに近いと思いますか」。井戸尻考古館の小松隆史館長が謎掛ける。小学生に問うと多くが「現代」と思うそうだ。小松館長の答えは「縄文」。「家の中と外の境は木と紙1枚でしたよ」としたり顔▼かの時代の竪穴式住居は屋根をカヤやアシでふいたと考えられており、かやぶき屋根の家は数こそ減ったが今もある。野を駆って獣を追った時代を数千年も離れた異世界と考えがちだが、当時の暮らしも血脈も今日までつながっているのだとにわかに実感が湧いた▼少し前まで、日本人は暮らしの必需品全てを身近な自然の中から素材を集めて生み出していた。その成果は時を超えて芸術と評されるほどの美しさも兼ね備えている。「生きる知恵と技術、創造力、身体能力どれも現代人よりはるかに高かった」と小松館長は言う▼諏訪市豊田小学校5年1組の子どもたちが、諏訪湖でカヤックに乗って水面に広がるヒシ植物とごみの除去に初めて挑戦した。湖底に張った根は堅く、草丈は数メートルある。揺れてバランスの取りづらい初乗りのカヤックの上で草の強固さに悲鳴を上げながら格闘した▼湖上スポーツや伝統業の漁師さんのことも少し身近に感じただろうか。ごみを拾う男児が「僕たちが落としたものもあるのだろうな」とつぶやく。一つの体験が過去と今を肌で感じ、これからをどう生きるかの思いを育んでいく。