2023年7月19日付
登山道を歩いていると、さまざまな気遣いに助けられていることに気付く。〇や×の記号などで正しいルートに導かれ、危険な場所では簡易な丸木橋やはしご、鎖などが足場を確保してくれる。「がんばるんだに、もうじきだでな」と刻まれた小さな標識から力を得たこともある▼感謝の念を抱きながらも近頃気になっているのは、橋やはしごが朽ちるなどしてかえって危なくなっている場面に出合う機会が増えていること。橋やはしごを踏みぬいてしまったらと考えると、不安が募る▼登山道は近くの山小屋や自治体の関係者、地元ボランティアなどで維持されていることが多い。草刈りをはじめ、崩れやすかったり危険だったりする箇所の補修、補強などで安全な環境を提供してくれている。資材や道具の運搬や作業など、とてもまねのできない労苦にただただ頭が下がる▼道が荒れてきているのは、こうした手が十分に入っていないため。各地で、コロナ禍による山小屋の経営難や、それに伴う人手不足、自治体の財政難、関係者の高齢化などが要因に指摘されている▼富士山では2014年に保全協力金(入山料)の徴収が本格導入され、北アルプスをはじめ県内外の国立公園などでも協力金制度を導入する動きが広がりつつある。安全はただではない。安心して登山を楽しめる環境を守るため、諏訪や上伊那でも入山料の導入を検討してはどうだろう。