雨水貯留タンク設置進む 上伊那地域

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約200リットルを貯めることができる雨水貯留タンク=南箕輪村の南信工科短期大学校

県が流域治水対策の一環として取り組む「雨水貯留タンク」の設置が、上伊那地域でも進んでいる。同設備は降雨時の水を一時的に貯め、水路や河川への流入を抑制することで浸水被害の軽減を図る。県伊那建設事務所によると、管内では2025年度を目標に52基を県有施設に設置予定で、昨年度末時点で11基が完了。県と連動し、市町村が家庭へのタンク設置補助を行う動きもある。行政から家庭まで多様な立場から治水に関わり、流域の防災につなげる。

県は水害の頻発化や激甚化を踏まえ、従来の国県による治水対策だけでなく、市町村や民間事業者、住民らが協働して流域全体で対策する方針を掲げる。21年度からは5カ年の「県流域治水推進計画」に取り組み、雨水の貯留は同計画の主要事業の一つだ。

県は雨水貯留タンクを日常的に人の利用が多い施設などに設置。建物の雨どいから雨水を引き込み、タンクに貯留する。タンクの寸法は幅約1メートル、高さ約1.25メートル(脚部含む)、奥行き約30センチで、約200リットル貯留できる。貯留水は災害時にトイレの水を流す際の補助水などに活用できる。

県全体では終了年度までに439基の設置を目指し、昨年度までに182基を配備。各建設事務所は年間で10~20基の設置を行っている。伊那建設事務所管内は昨年度から設置を行い、これまで道の駅の「花の里いいじま」と「田切の里」(共に飯島町)、南信工科短期大学校(南箕輪村)、箕輪進修や高遠などの県立高校に配備した。

市町村では、伊那市が昨年度からタンクを設置する家庭への補助金事業を始めた。昨年度の申請数は15件だったが、今年度は既に13件と昨年度分に追い付く勢い。タンクの規格は100~200リットルが多数。集めた水を洗車や花壇の水やりに使うことで節水効果も期待されるという。同事業の実施は25年度まで。

同市は「(雨水貯留タンクの設置は)家庭にも環境にも地域防災にもつながる。それぞれの取り組みは小さいかもしれないが、多くの家庭が協力することで流域全体の治水に貢献できる」と話している。

県伊那建設事務所は「昔よりも局地的な豪雨が増えていて、県は流域に関わる皆さんと治水に取り組んでいる。雨水貯留タンクが少しでも水害を減らすことにつながってほしい」としている。

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