2023年7月30日付
小学校の1学期最終日。ランドセルに加え、絵の具や書道の道具、給食袋、図工の時間に作った作品-。抱えきれないほどの荷物を携え家路を急ぐ。その姿はさながらチンドン屋のよう。それでも明日から始まる夏休みを思えば心は軽かった▼多くの子どもにとって夏休みは楽しいものだと思うが、一方で家にいることがつらいと感じている子どももいる。名古屋大学大学院教授で教育社会学者の内田良さんが先日のNHKラジオで話していた。いくつかの調査でそうした子どもは1~3割に上るという▼背景には虐待の問題がある。身体的な虐待ばかりでなく、食事を作ってもらえないといったネグレクト(養育放棄)もその一つだという。学校では毎日給食が出るが、夏休みになるとそれがなくなる。子どもにはつらいことだろう▼他方、子どもが毎日家にいることに親も少なからずストレスを感じているという。だが家庭内の問題を口に出すのはタブーとされ、口を閉ざしてしまう。特に長期の休み中は学校など外部の目が届きにくく、家庭の中で何が起きているか分からないため、虐待につながる事例もある▼そんな子どもたちのために内田さんは学校、家庭以外の「第三の居場所」が必要だとし、その一つに図書館を挙げた。どの地域にもあるし、お金もかからない。必ずしも図書館の設置目的にはそぐわないかもしれないが、大切な視点だと感じた。