尖石遺跡の出土品「埋設土器」 茅野市へ寄贈

故今井広亀さんが保管していた尖石遺跡の出土品「埋設土器」の説明を聞く山田奈津子さん(右から2人目)=茅野市役所
下諏訪町出身の郷土史家、今井広亀(ひろき)さん(1897~1986年)が保管していた国特別史跡「尖石遺跡」(茅野市豊平)の出土品「埋設土器」1点が、孫の山田芳子さん(71)=同町=から茅野市に寄贈された。一般社団法人「大昔調査会」によると「尖石遺跡の調査の第一歩となった貴重な資料」。市は2日から、市尖石縄文考古館で展示する。
埋設土器は直径約16センチ、高さ約18センチの縄文時代中期の土器。考古学研究者の故宮坂英弌(ふさかず)氏が進めた尖石遺跡の発掘調査で、1930年7月28日に第2号炉址で発見された。当時、豊平小学校に勤務していた今井さんが調査を行い、埋設土器と炉址を写真に収め実測図を作成するなど詳細に記録した。
今井さんが生前に集めた遺物の中の1点で、山田さんの自宅の土蔵に保管されていた。昨年6月、山田さんが遺物を地域に役立てたい―と諏訪地域の考古学や歴史学などの研究家らでつくる大昔調査会に相談したことで、存在が明らかに。出土地である同市に有効活用してもらおうと寄贈が決まった。
1日は、同市役所で今井敦市長が、山田さんの長女で今井さんのひ孫に当たる山田奈津子さん(37)=東京都=に感謝状を手渡した。今井市長は「尖石遺跡を象徴する貴重な土器。多くの人に見てもらいたい」と感謝した。奈津子さんは「茅野市や諏訪地域の歴史学の発展に寄与するよう使ってもらえたら」と話した。
大昔調査会副理事長の三上徹也さん(67)=岡谷市=は「有名な土器であり、拝見して本当に驚いた。資料をきっかけに今井先生に光が当たればありがたい」と期待していた。