2023年8月6日付

LINEで送る
Pocket

東アフリカ・エチオピア北西の町バハールダールで修道院を見学した帰り道、案内役の大学生アグリ・アキルさん(20)に「実家でコーヒーセレモニーをするけど、あなたも来ないか」と声を掛けられた。彼女は大学が夏休みになり、アルバイトで観光地を巡るガイドをしていた▼同国はモカ・コーヒーの原産地。古くから自生するコーヒーノキの果実を煮て食べる習慣があったとされる。隣国のケニアでは栽培するコーヒー豆の大半を輸出するのに対し、エチオピアは生産量のほぼ半分を国内で消費する▼コーヒーセレモニーは、一般家庭で日常的に行われているコーヒーを飲むためのしきたりだ。家族が待つ実家に私を招いたアグリさんは、袖や襟元に赤や青、黄色の刺しゅうをした純白の民族衣装姿で現れた▼セレモニーは「チャッフェ」と呼ばれる草を地面にまき、香をたくところから始まった。そして、よく洗った薄緑色の生豆を鉄鍋に入れて炭火にかけ、豆から白い煙が上がるほど深煎りした。続いて木製の臼ときねで粉砕し、水と一緒に「ジャバナ」と呼ばれるポットへ入れて煮出した▼カップに入れて差し出されたコーヒーは、ドロッと濃くまろやかな味わいで強い香りがした。彼女は「エチオピアの文化を外国の人に知ってもらいたかった」と笑顔を浮かべた。酷暑の夏。意識をシャキッとさせるために飲む1杯のコーヒーが欠かせない。

おすすめ情報

PAGE TOP