2023年8月7日付
市長と議会の蜜月が終わり、政治家の覚悟が厳しく問われる季節が訪れる。諏訪市文化センターの大規模改修を巡って対立した市長と議会を取材しながら、そんな気配に確かな手応えを感じるようになった▼混乱は4月の市議選後、圧倒的多数を誇った市長与党的会派の分裂、過半数割れが発端だった。離脱した議員を中心に多数派が生まれ、市議会6月定例会で文化センター改修の基本設計委託料を削除する修正案を可決。新勢力は事業を止めるほどの力を見せつけた▼市長は2日の臨時会で委託料を再提出し、市長派の説得に応じた議員1人が賛成に回って可否同数となり、議長裁決で議会を通った。混乱は収束したが、会派の勢力図は変わらない。市側が対応を誤れば議案が通らない事態が再び起こり得る▼問題の本質は文化センター改修の是非よりも、市側の「説明」の在り方だった。委託料削除からわずか1カ月後、市は多くの情報を開示する。議会や市民の求めに応じたものだが、情報を独占する行政の姿勢は重要だ。「透明度日本一」をうたう市長は反省を口にした▼急速な少子高齢化、増大する社会保障費、老朽化する公共施設、厳しい財政…。地域課題の解決と発展の道筋を示すのが政治家だろう。国や県の支援は大事だが、自らの決断と責任で事業の必要性を語っているか見極めたい。市長と議会の緊張関係が大切なことを教えてくれた。