月遅れの七夕伝統 伊那で「さんよりこより」

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鬼役の大人2人に七夕飾りを持って駆け寄る子どもたち

三峰川を挟んだ伊那市の二つの神社で行う月遅れの七夕の伝統行事「さんよりこより」(市無形民俗文化財)が7日、美篶川手地区と富県桜井地区の天伯社であった。洪水を起こす「鬼」(疫病神)役の大人を地域の子どもたちが七夕飾りでたたいて追い払い、地域の安全や無病息災を願った。

川手地区の天伯社には、地元の小学生や美篶西部保育園の年長児ら約150人が短冊で飾られた竹を持って集まった。子どもたちは、鬼に扮して太鼓を打ち鳴らす大人2人を囲んで「さんよりこより」(さあ寄って来いよ)と唱えながら周回し、3周目で一斉に駆け寄ってめった打ちにした。短冊や飾りが散乱するほど容赦な”攻撃”に、さすがの鬼たちもほうほうのていで退散した。

この後、大人たちはみこしをかついで三峰川へ。放流で水量が多く、川底が深くなっているため、川を歩いて渡るみこし渡御は見送り、ご神体だけを対岸に渡した。桜井天伯社でも地元の子どもたちが同じように「さんよりこより」を行い、鬼を追い払った。

二つの天伯社は、高遠の藤沢片倉に祭られていたご神体が、約600年前の室町期に洪水で押し流され、いったん桜井に漂着した後、川手に流れ着いたことが縁で設けられたと伝えられる。洪水を鎮めるために始まった神事だが、川を隔てた二つの神社の関係から、いつしか七夕伝説とも結びついた伝統行事になったのではと考えられている。

川手地区で参加した美篶小4年の児童らは「願いがかなうように、めちゃめちゃ強くたたきました」と笑顔だった。

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