2023年8月8日付

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自身の戦争体験から二度と戦争を起こしてはならないと訴え続けた絵本作家のいわさきちひろさんは、ベトナム戦争に対する憤りを創作絵本「戦火のなかの子どもたち」(1973年、岩崎書店)に静かに込めた。赤いシクラメンの花に浮かぶ子どもたちの瞳がささやく。戦禍の中を生きることを余儀なくされた子どもたちに生命力にあふれた笑顔はない▼ロシアによる侵攻で始まったウクライナ戦争はいまだ終わりが見えない。世界の放送局が伝えるミサイル攻撃の被害。年齢に関係なく命を奪い、中には幼い子どもも含まれていたと報じる。爆音におびえ、泣きながら親を探す子どもの姿に指導者は何を思うのか▼8月6日の広島原爆忌には、原爆の火がともる茅野市運動公園の平和の塔でも平和祈念式が行われた。中学生から年配者までが献花し、犠牲者に哀悼の意をささげ、核なき平和な世界を願った▼ウクライナ戦争により高騰した燃料費は原爆の火をともし続けることさえも難しくさせているという。収益を燃料費に充てようと、実行委員が販売したいわさきさんの作品のカレンダーを購入した▼それを機に改めて「戦火のなかの子どもたち」を手に取った。シクラメンの中から、この世に生を受け、そして死ぬまでずっと戦争の中だった子どもたちの瞳が最期をささやく。きょう8月8日はいわさきさんの命日。恒久平和への思いを新たにする。

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