2023年8月11日付
足取りもたどたどしい幼子が顔を真っ赤にして水の入ったバケツを掲げ、隣の大人に手渡す。諏訪市内で開いた防災運動会でのバケツリレー競争の一こま。未就園児から80歳代後半のお年寄りまで幅広く、車椅子利用者も参加していた▼チームに分かれ、事前の作戦会議では体力や年齢、得意に合わせて役割を決め、ヨーイドン。夏の日差しに涼の趣向だったが、参加者は和やかに楽しみつつも力仕事に大汗をかいた。災害時に各所で火の手が上がればやはり大慌てとなる。そんな状況も連想された▼参加者のほとんどが初めての体験で、予想以上の大変さを実感しつつ「バケツリレーなんて古くさいと思ったけど、いざという時に人力は強い」との声が出た。被災現場に見立てれば「居合わせた人たち」が相談し、協力し合うことの大切さと心強さも感じていた▼同市神宮寺区では小学生を集めて災害時に役立つ道具の使い方講座が開かれた。ロープを堅い輪にする「もやい結び」に挑戦した小学生の男児は、失敗を繰り返してようやく結べると大きな歓声を上げた。新しい知識や技術を得ることは喜びで、自信にもつながる▼各地で災害が相次ぐ昨今、「子どもとて身を守り生き抜くための力をつける必要がある」と副区長の内堀法孝さんは言う。生きる力の基は小さな経験の積み重ね。子どもも大人も何か一つ新たな体験を得る夏休みになったらいい。