2023年8月12日付

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「お願いだから、もう来ないで」―。「水の都」と呼ばれ、多くの観光客が訪れるイタリア北部の町ベネチア。世界有数の観光地で住民から悲痛な声が上がっているという▼原因はオーバーツーリズム。観光公害とも呼ばれる。ベネチアは1987年に世界遺産に登録され、観光客が増え続ける一方、住民は逃げ出し、人口は減り続けているそうだ。こうした状況に対し国連教育科学文化機関(ユネスコ)は7月31日、「危機遺産」への登録を勧告したと伝えられた▼あまり聞き慣れない言葉だが、武力紛争や自然災害、観光開発などによって重大な危機にさらされている世界遺産のこと。ユネスコはベネチアについて「オーバーツーリズムといった人間の活動が人類の宝に取り返しのつかない変化を引き起こす恐れがある」と警告しているという▼日本に目を向けるとどうか。よく指摘されるのが富士山の問題だ。登山者や観光客の増加に伴うごみやトイレの問題、踏圧による環境への影響、自動車やバスの排ガスの問題など課題は山積しているようだ▼新型コロナウイルスの5類移行後初の夏を迎え、各地の観光地には観光客が押し寄せている。10日には中国が日本への団体旅行を解禁したと報じられた。観光客の増加に拍車がかかりそうだ。地域の振興と環境保全や住民生活との調和をどう図っていくか。ここでも「持続可能な」取り組みが求められる。

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