2023年8月15日付
幼い頃、世の中はどんどん良くなっていくものだと信じていた。経済成長して生活は豊かになり、環境保全が進み住環境は快適になり、戦争はなくなり平和になる―。社会や大人は過去の過ちや失敗を糧に、正しい道を進んでいると思い込んでいた▼失われた30年、地球温暖化、そしてなくならない戦争。21世紀にもなってこんなことが起こるなんて信じられない―。ロシアの侵攻が始まった昨年2月、頭を抱え、混乱した様子で避難していたウクライナ女性の姿が思い出される▼核兵器も不拡散や禁止を目指す国際条約が発効される一方で、国際的な緊張の高まりから廃絶への道のりは険しそうだ。「どのような戦争でもすぐに終わらせることが可能だ。米国が広島や長崎に行ったように、原爆を投下すれば良い」。ウクライナを巡るロシア元大統領の発言は世界を揺るがせた▼「歴史から学ぶことができるただ一つのことは、人間は歴史から何も学ばないということだ」。ドイツの哲学者ヘーゲルが残したとされる警句。その通りだと嘆きたくもなるが、戦争については広島平和公園にある原爆死没者慰霊碑の「安らかに眠って下さい 過ちは繰り返しませぬから」の碑文も、戒めとして重く迫る▼この夏も原爆の日に合わせて広島や長崎の空に子どもたちの訴えが響き、胸に迫った。より良い未来のため、諦めず、歩みを止めず。終戦記念日に改めて思う。