2023年8月16日付
日本に終戦から78回目の夏がやって来た。8月6日の広島原爆の日、9日の長崎原爆の日に続き、15日に終戦の日を迎えた。厚生労働省によると被爆生存者は現在、約11万3600人にまで減少。平均年齢はついに85歳を超えたという▼広島原爆の日は、広島市が独自に条例で定めた「平和記念日」でもある。歴史的な悲劇から目を背けずに犠牲者の霊を慰め、世界平和を啓発する日。市役所などは閉庁になるという▼しかし今年の記念日では、市民の追悼の気持ちに水を差す出来事があったと一部で報道された。平和記念公園の一角で反戦・反核を掲げる団体が集会を開き、太鼓を打ち鳴らしてデモ行進してシュプレヒコールを上げた一方、静かに祈ろうとする団体がプラカードを掲げデモへの無言の抗議を行った▼本来の慰霊や追悼の趣旨とはかけ離れた異様な光景に参列者からは「慰霊の日なのになぜ」という疑問、「非常識だ」という怒りの声が上がった。双方、最終的に目指すものは同じなのだろう。それぞれの熱い思いや行動を否定するものではないが、個人的には静かに追悼の意を示す日であってほしかった▼今年はG7広島サミットで各国首脳らが原爆資料館を訪れ、被爆地広島が世界から注目を集めることとなった。広島を訪れる訪日外国人も増えたという。唯一の被爆国として、われわれ日本人だからこそできることとは何なのかを考えたい。