アサギマダラ羽化「手応え」 茅野の石山さん

石山さん宅で羽化したアサギマダラ=7月26日
茅野市玉川の愛蝶家、石山功さん(79)が、長距離を移動する美しいチョウ「アサギマダラ」の羽化に成功した。自宅庭の木陰にネットで囲った飼育スペースを設け、山で採集した卵20個余りを育成、18匹が羽化した。石山さんは「試験的だが、手応えを感じた。来年は数を増やしたい」と意欲を見せている。
石山さんは、同市の公民協働団体「小泉山体験の森創造委員会」のオオムラサキ部会の初代部会長として昨年度まで10年間、オオムラサキ(国蝶)の保護・飼育に携わった。後を任せられる体制が整ったことから、夢だったというアサギマダラの活動に専念できるようになった。
アサギマダラは、羽を広げると10センチほどある大型のチョウ。特徴のまだら模様は透き通るような薄い水色のあさぎ色をしている。春から夏に暑さを避けて南の地から飛来し日本列島を北上。秋には寒さを避けるため南下し、台湾まで約2000キロを渡った記録もある。移動途中の場所で卵を産み、代替わりをしながら旅を続けるという。
卵から幼虫、さなぎと育つ過程で寄生ハチなどに侵されたり、成虫になっても鳥などの天敵に襲われたりして、自然界での生存率はわずかという。石山さんは「せめて羽化するまでを守ってあげたい」と考えた。
6月中旬に八ケ岳山麓で卵を採集。1カ所の食草(イケマ)に2ミリほどの卵が1、2個ある程度で、見つけるのは容易でなく、3日間通って集めたという。卵は順調に育ち、7月中旬から下旬にかけて羽化し、既にすべてをふるさとの山に放した。
「成長の過程を観察し、美しいチョウになったときは感動した」と石山さん。「八ケ岳山麓で誕生したアサギマダラが長い旅をしていくと思うとロマンを感じる。まだ謎が多いのも魅力。1個でも多くの卵がチョウになるよう、できる範囲で活動を続けたい。マーキングは考えていない」と話している。