2023年8月18日付
諏訪湖祭湖上花火大会の前日、諏訪市の関係者に同行して舟で湖に浮かぶ初島へ向かった。尺玉と呼ばれる10号玉を含め、大きな花火玉の打ち上げ場所である。筒が整然と並ぶ。当日にかけて玉を仕込むだけの状態になっていた▼全長約240メートルの打ち上げ台も目前に迫った大舞台へ向けて最終調整の段階だ。「準備は万端」と小口煙火(諏訪市)の小口芳正会長。続けて「花火師、参加10社。いい花火を上げたいという気持ちが満タン」と心境を語った▼コロナ禍では大規模な花火大会や夏祭りが姿を消した。全国に名をとどろかせる飯島町の名煙火店でも受注が大きく減った。人々に笑顔を届け、その笑顔を照らす大輪の花。打ち上げたくても打ち上げられない。「従業員全員が苦しい闇の中だった」と振り返る▼苦境に直面しながら前を向いた。コロナ禍でできた時間で技術に磨きをかけた。各地の職人が連携し、時間と場所を公表せずに打ち上げる全国一斉のサプライズ花火も行った。音とともに夜空に突如現れた光跡。暗中模索の人々、我慢を強いられていた子どもたちにどれだけ勇気と希望を与えたことだろう▼帰ってきた15日の諏訪湖の花火大会。夜空を彩った大輪の花が消え、最後にこだましたのは観衆からの「ありがとう」の声。初島周辺で花火師たちがライトを左右に揺らす。感謝の伝え合いにも4年分の思いがこもっていて、じんときた。