諏訪湖に人工の魚のすみか造成 県が試行へ

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県は、諏訪湖創生ビジョンで掲げる「生き物と共存する諏訪湖」や生態系、漁獲量の回復を目指し、諏訪市豊田沖の諏訪湖に「人工エゴ」(人工の魚のすみか)を試行的に造成する。水生植物を植栽した浮きを湖面に浮かべ、直下の湖底に自然石を積み上げるなどし、魚介類の生息や産卵空間を創出=イメージ図参照。実際に在来の魚やエビ類が増えるかを中期的に調査する。年内には設置を済ませたい考えだ。

県民や団体、企業などからの提案事業を県が選定して予算化する県民参加型予算の事業。諏訪湖漁業協同組合(諏訪市)が提案した。「”諏訪の湖には魚多し”復活プロジェクト」と銘打ち、昭和40年代の湖内環境をモデルに漁協の協力を得て部局横断的に取り組む。

水生植物を植栽した2メートル四方の浮きを9基用意し、旧六斗川の河口沖に並列させ、くいで固定する。植栽はマコモなど在来の草木を検討。県諏訪地域振興局と諏訪農業農村支援センターによると、管理が容易で成長が早く、魚食性鳥類の止まり木にならないものを選定するという。

設置箇所の水深は2.5~3メートルで、湖底には大きな自然石を積み、魚類が石のすき間を利用できるようにする。効果検証の指標に用いる魚種はテナガエビ、モツゴ、タモロコ、ウキゴリ。昭和40年代には普通に見られた魚種で、投網とエビ専用の仕掛けを使って月1回の頻度で生息状況を中期的に調査。周辺に置く対照区との比較で人工エゴの設置効果を検証する。冬季結氷時も撤去せず通年設置する。

諏訪湖にはかつて水生植物が豊かなエゴ(入り江)が複数箇所にあり、多様な動植物を育んでいたが、埋め立てなどで消失。今回の設置個所の近くには、その中でも最大の「渋のエゴ」があった。

県水産試験場諏訪支場(下諏訪町)によると、昭和40年代の漁獲量はワカサギが年300~150トン、テナガエビを主とするエビ類が年100~20トン。ワカサギは近年10トンを下回ることもあり、エビは資源保護のため漁期を1カ月程度に限っている。県は「効果を検証し、湖内の生息環境修復に向けた取り組みを関係部局で協議していく」としている。

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