茅野市「のらざあ」1年 相乗り促進へ模索

ご近所仲間3人でのらざあを相乗り利用した東向ケ丘の住民=7月26日
人工知能(AI)が設定した最適ルートを運行する茅野市の乗り合いオンデマンド交通「のらざあ」は22日で運用開始から1年が経過する。利用登録者数は7月末現在で9427人、7月の1日当たりの平均乗車人数は165人で2月以降、前月比で横ばいから1割増で推移する。一方で、予約集中で利用希望者が希望する時間に乗車できない予約不成立件数は953件。背景には単独乗車の多さがある。市は相乗り乗車を促す特典を導入する。住民も相乗りの工夫を独自に試みている。
市のまとめによると、1台の車両に2グループ以上の予約があった割合は昨年8月の8.8%から今年7月には51.4%まで上昇。それでも約半数は乗り合いのない運行となっている。一方、総乗車人数に占める相乗りした乗車人数の割合は18.6%で一つの予約で複数の人が相乗りする割合は2割に満たない。
市は複数で乗車した場合に次回使える無料チケットの導入を決め、付与条件の調整を進めている。
一方で自発的に仲間同士で誘い合って相乗りする住民もいる。7月下旬、同市宮川の東向ケ丘の住民を取材した。同区ではのらざあ開始前、週3回の定時定路線バスと週1回の走行していた買い物無料送迎バスの運行があり、徒歩以外に手段がなく買い物に不自由しているお年寄りの生活の足だった。便数は少なかったが、毎回、同じ顔触れの住民が相乗りしていた。同区に住む女性(84)は「同じ時間にバス停に集まり、バスを待つ間、ちょっとした世間話をするのが楽しみだった」と振り返る。
のらざあの運行が始まり、東向ケ丘線は、昨年9月末で廃止された。昨年末には買い物無料送迎バスも運行を終了。女性はこれまでに何度かのらざあを利用したが、単独利用は行き帰りも買い物中も一人で「なんだか寂しかった」。最近は希望する時間帯が予約で埋まっていることもある。女性は「のらざあが始まる前のようにみんなで話をしながら買い物に行きたい」と仲間を誘い合って相乗りする提案をすると、すぐに賛同者が集まった。
7月26日、区内の県営団地前に集まり、同市宮川のショッピングセンター「メリーパーク」まで3人で相乗りした。のらざあ到着までの待ち時間も世間話に花を咲かせ、帰りも一緒の便に。女性は「久々に楽しかった」と笑顔を見せた。相乗り促進のアイデアを問うと「相乗りでメリーパークに行くなら、郵便局や診療所など、すぐ近くなら複数の場所で下車できるようにしてくれたらありがたい」と提案した。
のらざあは相乗りの場合、乗降場所はいずれも同一の場所から同一の場所までとなっている。目的地の周辺を条件に経由地を設定できる案について、市地域創生課の小池俊正課長は「利用者のニーズの把握に努めながらより良い運行に向け、いただいたアイデアの実現性や必要性を研究していきたい」と語った。
女性は「のらざあ運行前(定時定路線バス)の方が私らにとっては使いやすかったけど、のらざあが始まった以上、『前に戻して』と言っていても仕方がない。どうやったら使いやすくなるかという考え方で知恵を出していきたい」と語った。