「信州そば発祥の地」伊那市高遠町に博物館

そば博物館に展示する高遠石工が作った石臼を紹介する信州大学名誉教授の井上直人さん
「信州そば発祥の地」のPRを目指し、そば文化の歴史や魅力を発信する「そば博物館」が9月、伊那市高遠町の商店街にある蔵を活用してオープンする。そば店や研究者らでつくる地元のそば振興会がプロジェクトチームを設けて開設。江戸時代に高遠を拠点に石材加工を手掛けた「高遠石工」の石臼など、国内外の貴重な資料数千点を並べる。歴史文化やそば打ちなどに触れてもらう「高遠そば大学」も開講する。
信州そば発祥の地を2012年に宣言した同市。だが、その認知度が低いと感じていた「信州そば発祥の地 伊那そば振興会」が、発祥の地のアピールにつなげるプロジェクトチームを信州大学の井上直人名誉教授(作物学、南箕輪村)を代表者に博物館開設を準備してきた。
高遠町の一角にある明治時代に建てられた3階建ての蔵を借り、1、2階を展示場、3階を講習などの会場にする。9月1日にオープニング式典を行い、同2日に一般公開する。常時開館でなく、イベント開催に合わせて不定期開館する。入館料は200円の予定。
地元や世界各地の製麺道具といった研究用として集められた資料や寄贈品などを紹介する。展示の目玉という高遠石工による石臼は、地元で保管されていた花崗岩(御影石)の「高遠臼」の他に、武蔵国に移住した石工が砂岩で作り、在存数が少ないとされる貴重な「伊奈臼」を寄贈を受けて並べる。

そば文化の歴史や魅力を発信する博物館を開設する伊那市高遠町の蔵
ソバ栽培の起源や世界のそば文化などを解説するパネル展示も。信大農学部が収集した国内外の在来品種や野生種など多数のソバの種や、漢民族の両手包丁といったそばを切る道具などアジアや欧州の数十カ国の道具を実際に見ることができる。
江戸時代以降に作られた「そばちょこ」約400点、高遠藩の唐箕(とうみ)、岐阜県内から寄せられた直径約1メートルの特大のこね鉢などもある。ソバの研究を長年続けてきた井上さんは「驚くような貴重な資料が集まった。そばに焦点を当てた博物館はなかなかない。さまざまな角度から見てほしい」と話す。
そば大学は9月22、23日に開講。年3回ほど開く。初回は発祥の地をうたうルーツを知ってもらおうと、地元に伝わる「行者そば」の伝説を中央アルプス千畳敷で解説するほか、博物館見学、そば打ち体験を予定。定員25人。参加費は宿泊代含め3万3000円。申し込みは31日までに伊那谷ツーリズム(電話0265・94・6002)へ。
伊那そば振興会の飯島進会長=高遠町=は「国内外の貴重な資料による中身の濃い博物館になった。この施設を拠点に、そば大学の活動も合わせて魅力を発信したい」と話している。