2023年8月26日付
「あきらめないで」―。そんな見出しの新聞の投稿欄に目が留まった。以前の投稿者で、スマホを使いこせる友人に頼った経験から「自分が操作できるようになるには、今からでは無理」という84歳の人に向けたものだった(8月20日付毎日新聞「女の気持ち」)▼驚いたのは、この投稿者の年齢。94歳という。5月に入院が決まったとき、入院中はメールやラインで家族と連絡を取ることを勧められ、入院前に孫から使い方を教わったという。「そのおかげで入院中は、パリにいる娘や友人とも毎日メールとラインのやり取り(中略)便利なものは、使わないのはもったいない」とつづり、「頑張って」とエールを送っていた▼自分もデジタルは苦手である。もちろん、今やスマホは仕事や日常生活でも欠かせないツールになっているが、使っているのは電話とメールとネット記事の閲覧ぐらい。SNSもやらない。おそらくこの装置が持つ機能のほんのわずかしか使えていないだろう▼携帯電話が出てきた辺りから首輪を付けられているような息苦しさも感じていた。自他とも認めるアナログ人間である。最低限の機能だけ使えればいいと開き直っている▼それでも件の投稿者のように、いくつになってもチャレンジ精神は持ち続けたいもの。そう教わった気がする。それと熱心な新聞の読者ともお見受けした。新聞製作に携わる者としてうれしく思った。