2023年8月28日付
十数年ぶりに連絡があった知人から、会社を辞めたと告げられた。国々を渡り歩く夢があり、会社勤めでは実現が難しいとのこと。悩み抜いた末、「定年後では遅いかもしれない。体力、気力に自信のある今のうちに」と決断したという▼生活を心配するこちらの声を、独り身の身軽さと笑い飛ばした。うらやましさとともに、退職までしなければまとまった旅行もできない日本社会の窮屈さを思った。有給休暇などの制度もあるが、余暇などに活用している人はまだ少ないのではないか▼フランスではバカンスのため、平均3週間の夏休みを取るという。観光を楽しむよりは、避暑地などで家を借り、自然に親しんだり、趣味にふけったりと、のんびりとした時間を過ごす人が多いそうだ▼実は日本もフランスも、年間の有給休暇の日数は最大5週間ほどで大差はないとか。ただ消化の仕方や日数が異なる。休日や仕事に対する意識、文化、社会構造なども異なるから、フランスの例が日本に当てはまるかは分からない▼とはいえ、休暇が長期化、分散化すれば、限られた数日に目いっぱいのメニューを詰め込み、観光地へ向け覚悟を決めて渋滞に突入するしんどさは緩和されそう。家族や仲間とじっくり過ごす休暇を想像すれば、生活の質の向上への期待も膨らむ。そろそろ上手な休み方を会得したいと思いながら、今年もまた短い夏が終わろうとしている。