原田泰治美術館 25周年特別企画展が開幕

原田泰治さんの最後の完成作品「静寂な集落」
諏訪市渋崎の原田泰治美術館で8月31日、開館25周年を記念した特別企画展が開幕した。飯山市の人形作家、高橋まゆみさん(67)と、昨年3月に81歳で亡くなった諏訪市の画家、原田泰治さんの作品を展示。ふるさとを共通テーマとする作家2人のコラボレーション企画で、ぬくもりあふれる創作人形と絵画が会場を彩っている。
同館は1998年7月に諏訪市の諏訪湖畔に開館。二つの展示室を備え、原田さんの作品の常設展示などを行っている。
第1展示室では、高橋さんの創作人形82体が28作品を構成する。粘土や布、羊毛などで作り上げ、柔和な表情が特徴。にらめっこする子ども、寄り添う老夫婦、原田さんと親友である歌手さだまさしさんをモチーフにした「原田さんさださん」が目を引く。孫が祖父の背中を洗う「おふろの時間」もあり、原田さんの原画「湯治場」とともに飾っている。
第2展示室は、原田さんの作品展「一本の道 ふるさとから世界へ」を開催。初期から最晩年までの作品56点が並び、作風の移り変わりや画材の変化が見て取れる。グラフィックデザイナーとして活動を始め、幼少期を描いた1968年の「うしろのしょうめんだーれ」は原点となる一枚で、子どもの顔に表情がない。最後の完成作品となる2017年の「静寂な集落」(兵庫県)は、のどかな日本の原風景が細かなタッチで表現されている。

ぬくもりあふれる創作人形について語る高橋まゆみさん
初日のオープニングセレモニーには高橋さんを迎え、約40人が来場した。同館では6年ぶり3回目となる人形展。原田さんと表現方法は異なるものの通じるものがあったと振り返り、前回は「車いすでゆっくりと作品を見てくれた」と寂しさをにじませた。
土田祐子館長はあいさつで「コロナ禍の影響や原田先生の逝去、進む美術館離れで運営状況は厳しい」としながらも、「いつでもふるさとにあえる美術館。心の癒やしの場であり続けるために尽力したい」と述べた。
会期は高橋さんが11月26日、原田さんが来年4月7日まで。午前9時~午後5時。月曜休館(祝日は開館)。入館料は大人840円、中高校生410円、小学生200円、障がい者(大人)410円。問い合わせは同館(電話0266・54・1881)へ。