2023年9月7日付

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夜の国道を車で走っていると、歩道を歩く親子連れを見掛けた。先頭の人が懐中電灯を掲げて、腰丈ほどもある草をかき分けて足元を一歩ずつ探りながら進む。それはまるで未踏の秘境を行く探検隊▼一行を追い越して見るその先はさらに草丈が長く、脇から木の枝とそれに便乗したつる草が覆いかぶさるように張り出していて、もはや道ではなくやぶの一部。そんな状態が長く続く。夜とはいえ車の往来は多く、遅々と歩む親子の道行きが気の毒でならなかった▼テレビ小説「らんまん」の主人公、牧野万太郎さんには申し訳ないが、農地も家も公共施設も管理にあたり草は最大の”難敵”だ。汗水かいて刈ったのに半月もすればまた伸びる。切りもなくて、最後は「ちゃんと刈った」という自己満足で決着するより他にない▼交通の大動脈である国道でもこの状態。秋が来れば枯れてしまう草の処理に多額の血税を投じるより、路面の穴を埋める方が優先-ということにもなろう。ただ歩行者、特に車椅子の使用者や目の不自由な人が使うことを前提としない配慮のなさはいかがなものか▼人口減少が進み、社会を支える人たちが少なくなるにつれて施設の維持管理は人的にも資金的にも今後さらに手が行き届きにくくなる。無駄をなくし、より効率的で効果的な行政運営は望まれるが、「仕方ない」と切り捨てた中に弱者が取り残されては本末転倒だ。

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