高遠町歴博で特別展「高遠城のお稲荷さん」

高遠城にあった稲荷社に関連する資料が並ぶ特別展「高遠城のお稲荷さん」
伊那市高遠町歴史博物館主催の第80回特別展「高遠城のお稲荷さん」が9日、同館で始まる。かつて高遠城二ノ丸にあり、現在は宮田村の小田切家が所蔵する稲荷神社、通称「厩稲荷」の本殿と上家、奉納品類が県宝に指定されたのを記念し、奉納品類を中心に約110点を展示。村外で一堂に公開されるのは初めてで、高遠城での信仰文化を伝える貴重な資料が並ぶ。
昭和初期に旧藩士が記憶と実測を基に作成した「高遠城之図」によると、城内には八つの稲荷社があり、厩稲荷は二ノ丸の厩近くに設置されていた。廃城となった1872(明治5)年、それぞれの稲荷社は城外に移された。厩稲荷の本殿と上家、奉納品類は、30年以上厩に勤め、55(安政2)年に「御厩小頭」に取り立てられた小田切伊左衛門が藩主の内藤頼直からたまわり、小田切家に移された。現在、行方が分かっている稲荷社は厩稲荷を含めて2社のみとなっている。
会場には、馬鈴やくつわといった馬具、ほら貝、矢、獅子頭などの奉納品類がずらり。奉納されたのぼりは、1751(寛政4)年から年代順に並び、当時の藩士や役人の名前が記されている。本殿に飾られている絵馬などの写真も展示している。文化財の多くが損傷の少ない状態で維持され、小田切家で150年以上も大切に保管されてきたことが分かる。高遠城三ノ丸にあり、旧馬島家住宅(高遠町)敷地内に移設された稲荷社も展示している。
文化財所蔵者の小田切康彦村長は「お稲荷さんへの信仰があったからこそ、先祖代々大事に守り、その結果、良い状態を保ってきた。かつて高遠にあったものを里帰りさせたいという強い思いがあった」と話した。
同館学芸員の福澤浩之さんは「特別展を通して地域の文化財保存を考える機会にしてほしい」と願った。
特別展は12月10日まで。午前9時~午後5時。入館料は一般400円、高校生以下18歳未満は無料。問い合わせは同館(電話0265・94・4444)へ。