2023年9月9日付

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「社会貢献活動は業務の一環」。長年、従業員による本社周辺の美化活動を続けてきた伊那市内の企業では、勤務時間内に会社ぐるみで作業を行っている。社員にボランティア活動を強要しないための対応だとか。地域貢献に寄せる企業側の気概を感じる▼ボランティアの語源はラテン語の「ボランタス」。本来は「自由意志」を意味するという。戦乱が続いた欧州ではやがて「自警団」や「志願兵」といった意味に変化し、現在は「自発的に行動すること」を意味する。日本には大正時代に伝わり「慈善活動」という意味に置き換えられたそうだ▼国内でのボランティアの定義は、見返りを求めない奉仕活動というのが一般的。甚大な被害をもたらした東日本大震災でも多くのボランティアが手弁当で被災地支援に訪れた。困ったときに手を差し伸べる助け合いの精神は尊い▼「強制ならボランティアじゃないよね」。以前PTAの奉仕作業を取材した際に参加者からこんなぼやきを聞いた。少子化が進み、共働き世帯が増加する中、活動の担い手となる保護者の負担も増えたようだ。私事都合より奉仕作業を優先する保護者の協力には頭が下がる▼自治会の活動でも課題となる担い手不足。人口減少に伴い従来の仕組みが立ち行かなくなってきた。ボランティアは「無償で動く労働力」ではない。大事な作業には予算と労力を割く覚悟が必要かもしれない。

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