9.24岡谷市長選④ 防災

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現在、設置工事が進められている岡谷市川岸鮎沢区大久保の砂防えん堤

”記録的大雨”-。近年、毎年のように繰り返される豪雨災害は全国各地に甚大な被害をもたらしている。気候変動に伴い自然災害は年々、激甚化している。住民の安心・安全をどう確保していくのか。2006年と21年に大雨による土砂災害で尊い命が奪われた岡谷市にとっても防災・減災対策は大きな課題だ。

06年7月19日未明に起きた「平成18年7月豪雨災害」。4日前から降り続いた雨により、住宅地を飲み込む土石流が発生した湊の花岡区では7人が、川岸の橋原区では1人が死亡。家屋の全壊、半壊、浸水も多く発生し、多くの住民が避難生活を余儀なくされた。停電や断水などライフラインにも大きな影響が出た。

それから15年後の21年8月15日早朝。13日夜から降り始めた雨は諏訪の8月の観測史上最大を更新する記録的な大雨となった。この雨で川岸東の中大久保と大久保の二つの渓流で土石流が発生。中大久保の土石流は住宅を襲い、当時住宅内にいた母子3人が犠牲になった。

このとき湊でも大規模な土砂崩れが発生したが、06年の豪雨災害後に設置した砂防えん堤が土砂を食い止め、居住地域での大きな被害はなかった。県は現在、中大久保と大久保にも砂防えん堤を建設中。県諏訪建設事務所によると、えん堤本体のほか、本体下流側に設置する「前庭保護工」や周辺整備を含め25年度中の完了を目指すという。

ハード面に加えてソフト面も課題だ。21年の災害後、市が避難情報を発令した市内15区の住民を対象に行ったアンケートでは、約4割の世帯が避難情報の発令を把握していなかったことが分かった。

市はこうした実態を踏まえ、地域の防災力と減災力の向上のため、訓練と啓発事業に力を入れる。市内全21区の各自主防災組織と連携しながら、各種訓練に取り組むほか、防災資機材を整備。防災出前講座も積極的に行う考えだ。防災情報の周知方法には従来のメールや防災無線、車両広報などに加え、「LINE」の活用も進めている。

市危機管理室は防災・減災に対する体制を整えるとともに、「災害の記憶、教訓を風化させず、市民の『自らの命を自ら守る意識』を高めていきたい」としている。

大久保の下流に住む70代の夫婦は「あの時の恐ろしさは忘れられない」と振り返る。その上で、「予算的に難しいところもあると思うが、住民の安全確保を第一に考えたまちづくりをしてほしい」と新しいリーダーに期待する。

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