「胸たたき」勇ましく 上社十五夜祭奉納相撲

伝統の「胸たたき」を披露する青年力士たち
県無形民俗文化財の諏訪大社上社十五夜祭奉納相撲は15日、諏訪市中洲の上社本宮の斎庭で行われた。20~40代の青年力士(踊り子)11人が輪になり、古式ゆかしい相撲踊りを奉納。静寂に包まれた境内で、相撲甚句を歌いながら、全国で唯一継承されているという「胸たたき」(関西甚句)を披露した。
「胸たたき」は相撲の基本である守りと攻めを表現している。相撲甚句が終盤を迎えると、力士たちは輪の内側に右足を大きく踏み出し、両手で自らの胸を小気味よくたたき、伝統の踊りを神前にささげた。十五夜祭奉納相撲神宮寺保存会や力士の家族、諏訪大社大総代、参詣者たちが見守り、勇ましい若者の姿に大きな拍手を送った。
諏訪大社と相撲の歴史は古く、室町時代の「諏方大明神画詞」には祭事後に相撲が奉納され、江戸時代の記録には上社南東部にあった普賢堂の裏庭で相撲を行っていたという。昭和に一時中断したが1970(昭和45)年に地元有志が保存会をつくり復活し、2008(平成20)年に県無形民俗文化財に指定された。
力士は神宮寺区の若者が務める。大関は「神」と刺しゅうが入った唯一の化粧まわしを着け、力士をまとめる一生一度の重責を担う。大関を務めた笠原吉充さん(37)は「この11人がそろって神様に奉納できるのは1回きり。きょうが一番よかった。若い世代が誇りに思い、楽しんでいただけるように伝えていきたい」と話した。保存会の藤森実会長(53)は「まとまりのある立派な相撲踊りを奉納できた。神宮寺にしかない伝統を継承していってほしい」と願いを込めた。