災害時の重機ボラ育成へ防災準備室

始業前点検の手順を指導する小澤さん
災害時の強い味方、頼りになる「重機(建設機械)」。人命救助や防災活動、災害復旧や復興など、さまざまな場面で活躍する。しかし実際の現場で、重機はあってもオペレーターがいなかったり、いたとしてもペーパー資格者で思うように動かせずに重機を有効活用できないケースもあるという。こうした状況から、辰野町では資格者有志が町の防災の一翼を担おうと立ち上がり、任意団体「防災重機準備室」を発足。今月ペーパー資格者の解消を目的とした練習会を開催した。
操作法忘れ活動できず
人力ではなし得ない力でがれきや土砂を撤去できる重機は地震や土砂災害において一刻を争う人命救助、インフラの復旧作業、住民の財産の保護作業などで大きな力を発揮する。特に狭い場所に入れて小回りの利く機体重量3トン未満の小型重機の活躍の場は広いという。
小型重機を運転するには「小型車両系建設機械の運転の業務に係る特別教育」を修了することが法律で義務付けられている。近年、災害現場では、個人的に資格を取得したボランティアによる「重機ボランティア」の活躍にも注目が集まっている。
辰野町では尊い命が失われた2006(平成18)年豪雨災害を機に、08~09年にかけて町消防団員約20人が小型重機の資格を取得。しかし仕事などで日常的に重機を扱うことがないため操作法を忘れ、実際の現場で活動できない人が大半だという。

指導を受けながら繰り返し重機を操作する参加者
技術を体に染み込ませ
こうした状況なども踏まえ、昨年同町北大出で行われた重機講習会に参加した村上治平さんら有資格者が発起人となり、防災重機準備室を発足させた。9月9、10の両日は、同町内の穂刈軌道の敷地内で「小型車両系建設機械ペーパーオペレータ解消練習会」を町の防災訓練の一環として開催した。
講習会には2日間で10人が参加。日本技能教習所長野の非常勤講師・小澤江里さんがアドバイザーを務めた。参加者は、安全に作業を行うための始業前点検法を再確認した後、実際に重機に乗り込み、レバー操作や走行などを繰り返し練習。ゲームも取り入れながら水平掘削や地下掘削などの操作法も訓練し、技術を体に染み込ませた。
小澤さんは「1週間でも機械操作から離れれば感覚は鈍る。ましてペーパーでは実際の災害現場では役に立たない」と指摘。村上さんも「2021年の豪雨災害の際、被災した小野地区で実際にオペレーターがいなくて困ったことがあった」と話す。
常に練習ができる場を
上高井郡小布施町には、全国の寺院や企業などとの強固なネットワークを生かした災害支援活動をする団体「日本笑顔プロジェクト」があり、活動の一環として重機講習会も開催。全国から多くの人が教習に訪れ、重機ボランティアが育成されている。
村上さんは「せっかく資格を取得していても現場で役立たなければ意味がない。常に重機を練習できる場を辰野町につくり、辰野町を重機ボランティアの拠点にしていけたら」と話している。