2023年9月23日付

LINEで送る
Pocket

道路沿いの畑で風に揺らめくソバやコスモスの花。白やピンクの花々で彩られた景観を通勤途中の車窓から楽しませてもらっている。季節の移ろいを花に感じるのは四季がはっきりした日本ならではの感覚。厳しかった暑さも和らぎ、秋の訪れにほっとしている▼夏の終わりの風景を想像すると、井上陽水さんの名曲「少年時代」が思い浮かぶ。「風あざみ」という冒頭の歌詞からは、秋めいた風に揺れるアザミの花をイメージし、過ぎゆく夏に寂しさを感じてしまう。最近のことだが井上さんによる造語だと知り、初見の単語にも説得力を持たせる歌の力に感心した▼鼻歌を口ずさみながらハンドルを握っていると、目に付くのは季節の花ばかりではない。耕作放棄地や遊休農地に繁茂する雑草。原野と化した農地に郷愁を誘うような日本の原風景はない▼農業の高齢化に伴い増加している耕作放棄地。美しい農村景観をつくる取り組みとしてワイルドフラワーによる緑化が注目されている。種子などで簡単に繁殖し、放っておいても育つ野生の草花でつくる花園。休耕田であれば元の農地に戻すのも容易といい、景観対策として一定の効果を上げているようだ▼「お金と手間をかけ過ぎない」。庭造りをライフワークとする男性から物事を長く続けるコツを教えてもらった。景観づくりにも当てはまる言葉だろう。無理をせず、楽しく取り組みたいものだ。

おすすめ情報

PAGE TOP