全国から感謝の歌 「明日香」終刊

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終刊号となった「明日香」。展示ケース上の左側は創刊号=今井邦子文学館

終刊号となった「明日香」。展示ケース上の左側は創刊号=今井邦子文学館

下諏訪町で育った女流歌人・今井邦子(1890~1948年)が創刊した、女性だけでつくる短歌文芸誌「明日香(あすか)」が、今月発行の「第81巻第12号」(通算932号)をもって終刊した。結社としての活動にも幕を引き、81年間にわたる歴史を閉じた。終刊号には全国の同人たちが、歌の道を学び、人生の喜びや悲しみを歌に紡いだ「明日香」への思い出や感謝の気持ちを寄せている。

「明日香」は1936(昭和11)年創刊。結社「アララギ」で同郷の歌人・島木赤彦に師事した邦子が、師の死去から10年後に同派を退会し、女性だけの短歌結社として創設、主宰した。

短歌の投稿や選者の歌評などを中心に、随筆、研究、エッセーなども掲載。新人の発掘にも力を入れた。数少ない女流歌誌として会員数を伸ばし、2005年発行の「創刊70年記念特集号」(11月)では諏訪、松本、長野、東京、寒河江(山形県)、高知、山口、カナダなど国内外での支部活動が紹介されている。

この一方、以降の10年間では会員の高齢化と減少が顕著となり、次第に月刊発行の編集作業が困難になったという。最後の編集責任者を務めた酒井京子さん(80)=東京都大田区=は「関係者一同、歴史ある『明日香』の終刊は断腸の思いでした」と振り返る。「後に続く方が出てくれればいいけれど、全国的にも高齢化で愛好者が減っている中では難しい。寂しいですが致し方のない状況。今井先生の志のもと女性だけで80年間続けた歩みは、本当にすごいことだったと思います」と話した。

終刊には「邦子師にまみゆる時のあらばこそ明日香創刊のお礼のべたし」、「終刊に改めて繰る短歌(うた)の道拙(つたな)くも吾(わ)が生涯のまざまと顕(た)つ」、「明日香誌発行に一途の力注ぎ給ひたる編集諸氏にただ謝するのみ」など、人生の大切な時を共に学び、歩んだ明日香への思いや、感謝を詠んだ歌が数多く載った。

結社の幕は下ろしたが、各地の支部では、今後も有志の集まりとして歌会を続けるところもあるという。

下諏訪町湯田町にある町立博物館分館「今井邦子文学館」は、邦子が育った旧中山道沿いの茶屋「松屋」を整備した建物で、戦時中には邦子が疎開し、戦禍で休刊していた「明日香」を復刊、編集所が置かれた場所でもある。創刊号など明日香の関連資料も公開しており、本館の諏訪湖博物館・赤彦記念館では「邦子の足跡を残す施設として、明日香誌の紹介など節目となる展示を考えていけたら」と話している。

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