「聞き書き甲子園」 伊那市でザザムシ漁取材

川底の石に張り付いた幼虫を観察する小嶋さん(左)
高校生が地域の自然と関わる仕事に従事する「名人」の職場を訪ね、その知恵や技術、生きざまなどを記録、発信する第22回「聞き書き甲子園」の一環として、横浜市の高校生が25日、伊那市を訪れ、伊那谷に伝わるザザムシ漁を取材した。ザザムシ漁歴40年以上のベテラン、中村昭彦さん(79)=同市中央=宅を訪問し、伊那谷の昆虫食文化や漁の歴史、方法などを取材。天竜川にも足を運び、川底にいる幼虫の観察や道具の使い方などを学んだ。
「聞き書き甲子園」は農林水産省や文部科学省、NPO法人共存ネットワークなどでつくる実行委員会の主催。各分野の名人の推薦と高校生の受け入れに協力する市町村を全国から募り、農産漁村地域と高校生をつなぐ活動を展開している。高校生は9~11月にかけて計2回、名人を取材し、対話の全てを録音。名人の言葉のみを使って書き起こし、語り口を生かした「聞き書き」作品に仕上げる。
伊那市は自然と関わる生業を広く知ってもらい、関心を持ってもらおうと今年度初めて受け入れ市町村に登録。ザザムシ漁をはじめ、マツタケ、漆塗り、すがれ追いなど7人の名人を推薦した。
中村さん宅を訪れたのは神奈川県立川和高校(横浜市)の小嶋涼香さん。「祖母の姉が長野県に住んでいて、昆虫食には以前から興味があった」といい、ザザムシ漁をテーマに選んだ。取材は1対1で行い、ザザムシの名前の由来や特徴、食べ方、漁の方法、時期などさまざまな質問をぶつけた。
取材中には実際に珍味として親しまれているつくだ煮を試食。南箕輪村の天竜川では四つ手網を使った模擬漁を体験し、川底にいる幼虫も観察した。小嶋さんは「ザザムシ漁が地域で愛され、続いてきた理由が少し分かった。伊那についてももっと知りたい」と意欲的。中村さんは「伊那谷にしかない食文化であり、興味を持ってもらえたのはうれしい。ぜひ後世に残していってほしい」と期待した。
小嶋さんは10月中旬に2回目の取材を行い、年内には作品を仕上げて提出。来年3月の成果発表会では、優秀作品に大臣賞などが贈られる。