2023年10月1日付

LINEで送る
Pocket

前任地の諏訪市の本社に赴任した2017年、先輩記者から引き継いだテーマが諏訪湖だった。魚類大量死から1年の節目を記事にまとめてみては―。連載を念頭に取材を進めると複数の人が「沖野さんに話を聞くといい」と勧めてくれた▼早速取材を申し込んだのは諏訪湖クラブ会長で信州大学名誉教授の沖野外輝夫さん。電話で趣旨を伝えると「本に書いたよ」とやんわり断られたが、食い下がると情に厚い江戸っ子気質もあってか承諾▼取材の最後に「諏訪湖をもっと良くするには」と問う筆者に沖野さんは「どういう諏訪湖が良いと言うの」と逆に質問。水が澄み、さまざまな魚が多く獲れ、湖面を覆う水草や貧酸素の問題がなく…。思いつくまま列挙すると「もう少し諏訪湖に触れ、勉強した方がいいかもね」と笑った▼きょう10月1日は「諏訪湖の日」。諏訪湖流域下水道の一部が使われ始め、富栄養化した湖が浄化に向けて踏み出した日だ。前後1カ月間、諏訪湖を学び、守り、遊ぶイベントが行われている▼6月掲載の本紙対談企画で沖野さんは諏訪湖やその先のため、上流域の森林整備の重要性を指摘していた。八ケ岳、霧ケ峰、鉢伏山、入笠山、守屋山の山々から下った水は森を抜け、農地や市街地を経て諏訪湖に流れ込み、天竜川から太平洋へ。諏訪湖を良くする新たな一歩は湖周だけでなく上下流域も含めた関心の高まりにあるのだろう。

おすすめ情報

PAGE TOP