県フェンシング協会木下さん 30年ぶり世界へ

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フェンシング世界ベテラン選手権に出場する木下布美子さん

県フェンシング協会(事務局・箕輪町)事務局員で箕輪中フェンシング部の外部コーチを務める木下布美子さん(52)=駒ケ根市=が、米国で11日に開幕するフェンシング世界ベテラン選手権に日本代表として出場する。大学生時代に国内トップの座に上り詰めたが、早々に引退、長年競技との距離を置いてきた。指導する中学生たちの頑張りに競技再開への心を突き動かされ、約30年ぶりとなる世界舞台に挑む木下さん。かつての自身の足かせとなった「心の弱さ」を打ち払い、「子どもたちに後悔することなく諦めずに戦う姿勢を伝えたい」と闘志を燃やしている。

出場するのは50歳代の部で、種目はフルーレ。大会に向け、筋力トレーニングなどに励んだり、指導する中学生たちの対戦相手になって実戦感覚を磨いたりしている。箕輪町はフェンシングが盛んな土地柄で、同部も全国大会で目立った成績を挙げてきた。競技に打ち込む姿に刺激を受けて「自分も一緒に頑張りたい」と選手復帰を決意。今年3月の国内大会で優勝し、世界切符を獲得した。約30年ぶりに臨んだ大会で、「かつてのヒリリとした緊張感ある感覚がよみがえった」―。

秋田県出身。フェンシングに出合ったのは高校1年。スタートは遅かったものの、めきめきと頭角を現した。強豪の専修大に入学し、20歳のころ全日本選手権のフルーレで優勝。当時の最年少記録を更新した。五輪出場を目指して過酷な練習に明け暮れ、国内外を転戦。しかし代表選考会で敗れ、つかみかけた夢はこぼれ落ちた。失望は大きく、大学卒業を機にサーベルを置いた。同じくフェンサーだった夫と結婚し、約20年前に夫の実家の駒ケ根市に移住。競技仲間と連絡は取り続けたものの、家庭でも仲間とも、「嫌いなフェンシング」については進んで話題にすることは避けてきた。

向き合うようになったのは、子育てが一段落した2019年。縁あって話が舞い込んだ同協会事務局員の職に就き、箕輪中生も指導することに。「結構な時間がかかった」と屈託なく笑う。今も選考会の試合内容を覚えている。「心の弱さが試合に出た」ことを教訓にし、世界大会で心掛けるのは「諦めないこと」。「選手との駆け引きが最高に楽しい。世界の強豪との対戦が楽しみ」と情熱を再燃させている。

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