北澤会館竣工記念品の風呂敷 諏訪で見つかる

北澤会館竣工記念の風呂敷と三村一枝さん(左)
1962(昭和37)年に北澤工業が諏訪市湖岸通りに建設した福利厚生施設「北澤会館」(現諏訪市文化センター)の竣工(しゅんこう)記念品の風呂敷が、同市諏訪の三村貴金属店で見つかった。同会館の舞台と客席を仕切る緞帳と同じデザインで、同社を経営した北澤家と親交があった先代で彫金(ちょうきん)作家の三村昌弘(みむら・まさひろ、1915~98年)が譲り受けたものと思われる。
風呂敷は絹製で約65センチ四方の大きさ。文化勲章受章者で日本画家の杉山寧(やすし、1909~93年)が緞帳のために描いた「昇る陽(のぼるひ)」がデザインされ、小さな文字で「北澤會館竣工」とある。桐の箱に入っていて、のし袋には「北澤會館竣工記念」「北澤工業株式會社」と書かれている。製作した松屋(東京)のラベルもあった。
三村貴金属店は現在、三代目の昌暉(まさてる)さん、一枝(かずえ)さん夫妻が営む。2015年度に市美術館が開いた企画展「三村昌三郎・昌弘金工展―親子合作の美」に合わせ、自宅の資料を整理した際に一枝さんが発見した。美術を通じて交流があった北澤家から贈られたものと思われる。紙製の箱に入った同じ風呂敷2点もあった。
市美術館によると、北澤会館の緞帳は、杉山の「昇る陽」と東山魁夷の「清暁(せいぎょう)」の2種類ある。北澤国男社長(当時)が親交のあった2人に依頼し、北澤会館のために制作された。東山は諏訪のシンボルである諏訪湖を、杉山は朝日が昇る大空をモチーフに描いたという。「昇る陽」の原画は同館に収蔵されている。
建築家吉田五十八が設計した北澤会館は1977(昭和52)年に諏訪市に移管され、2014(平成26)年に国の登録有形文化財に登録された。市は今年度、大規模改修に向けた基本設計を行い、実施設計や改修工事を経て27(令和9)年度の供用開始を目指す。文化財の保存活用と耐震改修、省エネ対策を進め、「文化芸術活動の拠点として駅周辺の魅力向上」を図る考えだ。
一枝さんは、信州美術会副会長などを務めた昌弘が、理想の諏訪市美術館建設に情熱を燃やしていたことに触れ、「諏訪市には著名な作家の作品が数多くある。文化センターが美術館を兼ねた施設になり、本当の意味で文化芸術に触れる拠点になってほしい。大型バスで観光客が集まる場所になれば」と願った。
風呂敷は見学可能。申し込みは三村貴金属店(電話0266・52・0625)へ。