田辺堰を後世に 改修工事の記録誌作成

自然に配慮して護岸を改修した田辺堰で工事の記録誌を手にする八幡義雄さん。水辺に親しむ散策路も設けた(右奥が大祝邸)
諏訪市田辺、上金子、神宮寺の住民でつくる田辺堰(新川)改修委員会は、3区にまたがる用水路「田辺堰」で進めた改修工事の記録誌を作った。県や市の事業を活用して護岸を改修。2019年度までの3カ年は県の「地域発元気づくり支援金」の採択を受け、諏訪上社大祝諏方家住宅(大祝邸)北側から下流214メートル区間を自然に配慮した護岸にし、水辺に親しむ散策路を設けた。歴史ある堰を知ってほしいと、関係機関や地域の公民館、学校、諏訪6市町村の図書館に寄贈する。
江戸時代の宮川は大きく蛇行し、たびたび決壊して災害を引き起こした。高島藩は1806(文化3)年にかけて宮川の直線化工事を実施。田辺堰は工事で生まれた旧河川敷を利用した用水路で、かんがい用水だけでなく、水道が整備されるまでは生活・防火用水、飲用水、産湯として大切に使われてきたという。
住民有志は貴重な財産を後世に残したいと、2002年ごろに同委を立ち上げた。堰沿いには大祝邸や千躰仏地蔵堂などの文化財、「上社の杜歴史の散歩道」があり、元気づくり支援金事業では自然と歴史を感じられる水辺空間を目指し、砕石を敷いて散策路を整備した。

県諏訪地域振興局の宮原渉局長に記録誌を手渡す田辺堰(新川)改修委員会
記録誌はA4判フルカラー92ページ。同委の積立金で150部作成した。田辺堰の歴史や今回の改修の経緯、整備後に行われた堰活用の水辺学習会などを掲載。支援金事業で子ども向けに作った小冊子も収録する。水草繁茂対策として一部の川底には諏訪特産の鉄平石を敷いたことや、その隙間が水生昆虫の生息地になって夏に飛び交うホタルの数が増えたことも紹介する。
12日は、会長代理の八幡義雄さんと事務局の藤森浩人・田辺区長が県諏訪地域振興局と市役所を訪れ、支援に感謝して記録誌を贈った。振興局の宮原渉局長は「先日散策したが、また行きたくなる水辺空間だった。記録誌も素晴らしい。歴史ある地域にさらに磨きを掛けてください」と期待を寄せた。
県諏訪建設事務所の元所長でもある八幡さんは、地権者の理解と協力にも改めて感謝し「維持管理に力を入れ、子どもたちが喜ぶ水辺空間をつくっていきたい」と決意を新たに。「取り組みが他地域の参考になれば。田辺堰が知られ、幅広い世代に活用されたらうれしい」と話した。