2023年10月19日付
ポイ捨てを減らしたい-。そんな思いから岡谷市の諏訪湖畔に設置されたごみ箱。そのごみ箱には投入口が二つあり、「好きな食べ物は?」の質問とともに、投入口の一方には「最初に食べる」、もう一方には「最後に食べる」という選択肢が示されている▼同市の高校生が「探究」の学習の一環で始めた。強制することなく人々の行動を変容させる「ナッジ理論」に基づいた実証実験といい、単にごみ箱に捨てるよう呼び掛けるのではなく、楽しい要素を加えることで自発的な行動を促す▼人間の意思決定にはさまざまなバイアス(偏り、偏見、先入観など)が存在するという。こうした意思決定の歪みを、行動経済学的特性を用いることで、よりよいものに変えていこうという考え方がナッジと呼ばれる(大竹文雄著「行動経済学の使い方」岩波新書)▼ナッジは「軽く肘でつつく」という意味の英語。よく知られた例では、男性用トイレの小便器のハエのナッジ。小便器にハエの絵を付けたところ、多くの人がそのハエを目掛けて排尿するようになり、飛び散りが減ったというもの。的があれば狙いたくなる。そんな人間の心理を利用し、多くの人の行動を強制することなく変えさせた▼そこで気になるのは、勉強嫌いの子どもをやる気にさせる効果的なナッジはないものか。あの手この手でいろいろ試したが、どれも不発。なかなか妙案が浮かばない。