高齢者用電動車両 デジ田特区茅野で実証

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5段階で時速10キロまで加速できる高齢者向け電動車両の乗車体験

総合デベロッパーの森ビル(東京都)は、中山間地域の高齢者が運転免許証がなくても快適に使える移動手段の確保と安全運行を両立する実証を、国からデジタル田園健康特区に指定された茅野市で行っている。18日は、道交法で規制されている時速6キロを超えて同10キロまで加速できる高齢者向け電動車両の乗車体験を、市内の別荘地「蓼科高原チェルトの森」内の民有地を貸し切って初めて実施。別荘オーナーらと規制緩和について意見を交わした。

内閣府が先端的サービスの開発、構築、実装に向けた調査として民間公募した提案から選定した18事業のうちの一つ。高齢者向け電動車両は運転免許が不要で歩道を通れるが、速度は大人が歩くスピードとほぼ同じ時速6キロに制限されている。ただ、歩行者が多い都市部と比べると、中山間地域や別荘地では利用環境が異なる。

同社は3Dマップ(立体地図)とデータ連携した危険箇所の通知や交通ルールに沿った運転アシスト、見守りなどの運行システムを組み合わせて、高齢者向け電動車両の速度を大人のジョギング程度の時速10キロまで加速できるようにする可能性を調べている。

自動車を運転できない高齢者らの移動手段として市内で運行されている人工知能(AI)活用のオンデマンド交通「のらざあ」の運行エリアは現状、同別荘地では管理事務所までとなっており、そこから自宅までの交通手段は別荘地に定住する市民にとって大きな課題。免許返納をためらう理由の一つになっている。

18日は現行法下で利用できる時速6キロと、同10キロの2種類の電動車両を用意。駐車場が狭かったこともあり、乗車した別荘オーナーからは「時速10キロはちょっと速いかな」といった意見が聞かれた。一方で管理事務所から徒歩で30分ほどの場所に住み、2年ほど前に運転免許を返納した男性(75)は「別荘地内の長い直線道路を考えると、速い方が使い勝手がいい。買い物や通院などでのらざあは使わざるを得ない。接続点までの移動手段として良いと思う」と話していた。

同社はこのほか、免許証不要で時速20キロまで出せる電動キックボードなどの特定小型原動機付き自転車の車体幅の規制を現行の60センチ以下から70センチに緩和し、走行時の安定性を高める車両を導入する提案も行っており、近く市内で体験会を予定する。

同社の矢部俊男さん(61)は「中山間地域に住む高齢者が、運転免許を返納した後でも快適な移動手段と安全が確保されている社会がこれからの地方において必要ではないか」と話した。

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