2023年10月20日付

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「誰か答えて」。意見を求める講師の問い掛けに驚くほど無反応な生徒たち。質問の意味が分からないのか、それとも答える意志がないのか。不気味な沈黙に包まれた教室から講師の不安やいら立ちが伝わってくる▼外部講師を招いた特別授業。取材に訪れた学校で、こんな居心地の悪い場面に出くわすことがままある。周りの友達の様子を気にしながらも自ら口火を切ることのない生徒たち。沈黙に耐えかねた講師が根を上げるまで我慢比べが続く▼日本の若者は「意見を言わない・討論ができない」。東京都立大大学院客員教授の宮下与兵衛さんは講演で「小学校からの『横並び統制』教育が同調圧力を生み、中学校の『関心・意欲・態度』の観点別評価が『正解主義』と『発言するのは成績を上げるためにしていると思われることがイヤだ』という気持ちを生む」と分析していた▼結果として発言しない、討論しない、目立ちたくない若者が増えてしまったのだろうか。授業後、恐る恐る生徒に感想を聞いてみると、存外しっかりした考えを持っていて安心した。意見がないわけではない。表明できないのが課題なのだ▼外部講師による音楽の指導。積極性に欠ける歌声に講師が「失敗してもいい。ファーストペンギンになって」と呼び掛けた。危険な海に飛び込んでこそ得られる成果がある。子どもたちにはそんな成功体験を積み重ねてもらいたい。

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