2023年10月21日付
なめんなよ―。ベテランの気概や持ち前の反骨心、勇気が画面から伝わってくるようだった。15日のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)に魅せられた。パリ五輪日本代表を決める大舞台。130回目のレースという36歳の川内優輝はスタートから飛び出し、35キロすぎまで独走した。魂の走りは反響を呼び、川内劇場とも賞された▼特に感動したのは、先頭集団に追いつかれてから。ずるずると後退することなく食らいつき、最後まで大迫傑と3位争いを演じた。どこかで落ちると見込んだであろうライバルや私を含めた観衆らに、意地を見せつけた▼優勝した小山直城もマラソン歴1年半で実績のない伏兵。「力勝負だと負けてしまう。集団の力を利用しようと思った」。 終盤で飛び出す前に先頭集団から横に外れ、ライバルたちを冷静に観察するようなしぐさに、すごみを感じた▼女子は茅野市出身の細田あい。「手に届くところまできている」との言葉通りに先頭争いを繰り広げ、一時は後退するも、最後は力を振り絞って猛烈に追い上げて見せた。五輪切符には7秒差で届かなかったが、けがなどを乗り越えて復活の走りを印象づけた▼あす22日は、第35回諏訪湖マラソン大会。選手や関係する皆さんも、さまざまな思いや物語を胸に、号砲を待っていることだろう。沿道からの温かい歓声を力に、それぞれの人生を彩る1日になればと願う。